小さな国語塾のつぶやき
やく
「来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや 藻塩(もしほ)の 身もこがれつつ」(藤原定家)【 現代語訳 松帆の浦の夕なぎの時に焼いている藻塩のように、私の身は来てはくれない人を想って、恋い焦がれているのです。】これは百人一首に収められている一首。この歌の主人公は、海に入ってあわびなどの海産物を採る海乙女(あまおとめ)の少女。いつまでたっても来てはくれない、つれない恋人を待って身を焦がす少女。やるせなく、いらだつ心を抱くその姿を、松帆の浦で夕なぎ時に焼く藻塩と重ねて表している。つまり、塩を「焼く」こととやきもちを「妬く(やく)」状態を美しい歌にして表現している。「焼く」には「お節介を焼く」「世話を焼く」で使われるように、「気にかける」という意味があるが「焼きもちをやく」の「やく」の本来の意味は「妬く(やく)」(うらやましく思う、嫉妬する)である。いやはや改めて、漢字は様々な意味や読みがあることを実感させられる。
2015/09/21 09:54
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