小さな国語塾のつぶやき
別人からの視点
「男もすなる日記といふものを、女もしてみむ、とて、するなり。(男だって書くという日記というものを、女の私も書いてみようと思って、書くことにする)」という出だしで始まる「土佐日記」。作者の紀貫之は、作中で朝廷から下ってくる国司についてかなり辛辣なことをズバッと書いている。国司である自らが実に冷徹な視線で書くからには、自分の顔や名前を出しては、いかにもまずかったであろう。ゆえに、女性という人物を仮想して書いたのではないかと言われている。事情はどうであれ、別の人間の視点から客観的に物を書くということはとても楽しかったのではないか?と勝手に想像する。先日、自分自身が高齢の女性として文章を書いたのでそう感じるのである。下書きができた状態のメモから、きちんとした文章をおこしてほしいという依頼を受けて書いたわけだが・・・。高齢の方はどんな風に考えるか?言葉遣いをするか?とあれやこれやと何度も推敲しながらの作業でとても勉強になった。生徒には「なりきり作文」として人間以外の視点から文章を練習させたことはあったのだが、今後は違う年齢、性別の人物を想定して練習するのも面白いかも?と思案中。ぜひ皆さんも頭の体操におすすめである。
2014/11/23 04:41
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