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小さな国語塾のつぶやき

唾をつける

「きのふはけふの物語」(昨日は今日の物語)という江戸時代の仮名草子(仮名で書かれた読み物)の中にこんな話がある。「田舎から初めて京に出てきた人がいた。早速宿から見物に出ようと下人を呼び、道に迷わないように何かを目印にするように伝えた。いざ見物を終えて帰ろうとしたところ・・・下人は目印を見つけることが出来ない。なぜならば下人は途中途中の門柱に唾をつけたり、屋根にとまっているカラスを目印にしていたのだ。当然唾は乾く、カラスはどこかに飛んでいってしまったため・・・目印がなくなった」という笑い話。さて、唾と言えば現在でもいくつか慣用句に用いられている。例えばダイレクトに「唾を付ける」という慣用句、意味は「他人にとられないように、また自分のものであることを明確にするために、前もって声をかけたり手段を講じたりする。」となる。こちらの「唾」は消えにくい、なぜなら「唾」というのはあくまでも「たとえ」であり、本来の意味は「声かけ」「手段を講じる」わけだから。消えないどころかとっても有効な方法だと言えるだろう。何事も心の中で思っているだけではなかなか物事は進んでいかない、まずは動いてみる…言い換えると「唾を付ける」ことが大切だと思う。チャンスはどこに転がっているか分からないし、チャンスが来た時に前もって「唾をつけておく」と自分にチャンスが巡ってくることが多いだろう。だって・・・「唾」がついているわけだから他の人はひるむ?!そんなこんなで自分自身、前もって「これぞ」という想う時は遠慮なく「唾」を付けるようにしている。おかげで今も昔も時間差は生じることもあるけれど、「唾」の効力があることもチラホラ。ちなみに古来より、唾には魔力を封じる力、霊力があると信じられていたと言われているそうだ。時には乾いてしまうかもしれないけれど、うまくいけば霊験あらたかになるかもしれないと考えるとワクワクする言葉。

2017/10/01 16:32

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