めむろ国語専門塾
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小さな国語塾のつぶやき
時代背景を理解しよう
前回は「名作」だからといって鵜呑みにする必要はないと書いたけれど、「こころ」は「名作」だということは間違いない。もしも「名作」ではないならば、こんなにも長く読み継がれることはないはず。さらに言うならば「理解できない」のが悪いのではなく、昔の「名作」を読むことによって、その作品が書かれた時代背景のことを知る、思いを馳せるということが大切なのだと思う。さらにさらに言うならば理解したうえでその時代の「傾向」なるものを覚えておく必要がある、受験をクリアするためには。典型的なのが漢文における漢詩。「黄鶴楼にて孟浩然を広陵に之くを送る」(李白)や「元二の安西に使ひするを送る」「臨高台 黎拾遺を送る」(王維)はすべて友人との別れを惜しむ気持ちが書かれている。でも現代の中高生がテーマについての4択では「友人との別れを惜しむ、悲しむ」と「友人の栄転を喜ぶ、期待する」でかなり迷ってしまう。大体が半々での正答率で、正解した生徒も「迷った・・・・」という。確かに友人の「栄転を喜ぶ」という気持ちもあっただろう。でも今とは時代が違う!飛行機、列車、バス、車といった交通手段が発達しているわけではない時代、しかも日本の何倍もの国土面積を誇る中国大陸。一度別れると二度と会えない可能性が高いのだ!そう考えると「別れを惜しむ、悲しむ」>「栄転を喜ぶ、期待する」という図式が成り立つことは理解できるだろう。というわけで時代背景を知った上で漢詩については「友人との別れを惜しむ」がテーマとなっている場合が多いと覚えておく必要がある。何事も時代とともに「正解」「基準」が変遷していくのはある意味仕方がない。文学に限らず、美人の基準が今と昔では大きく違い・・・お教室ではそのことが笑い話として持ち上がり・・・・挙句の果てには「先生!いつの時代だったら美人だったかなあ?」という有難い一言まで頂戴している今日この頃。
2017/09/24 03:42
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