めむろ国語専門塾
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小さな国語塾のつぶやき
絵の正しさ・・・
古文でよく出題されるものの一つが「私可多咄(しかたばなし)」中の名人の話。簡単に内容を紹介する。「唐(昔の中国)の絵描きに戴嵩という人がいた。牛を書くことを最も得意としており上手だった。 ある時、角を振りあげ尾を立てて牛達が闘う様子を描いた。それを牛飼いの童に見せたところ、童はこれを見て次のように言って笑った。『牛が闘う時は、尾を立てるのではなく腹に尾をつけているものだから、この絵は牛が尾を立てているので、まちがっているよ。』 戴嵩は驚いて成程と感じ入り、その絵を破いてしまった。本当に名人という者は戴嵩のような人を言う」いった内容。さて、2本の読書感想文を書く!と張り切っている2名の内の1人、T君!昨日は一冊目の本のまとめ作業。野球に関する絵本なので、内容はもちろんのこと絵を見て色々とコメントしながら書き進めている。彼自身が野球少年なので「あ、これは右バッター、これは左バッター!主人公は両方で打てるんだ~、上手なんだね。僕も両方頑張ってるよ」と絵を見ながら的確なコメントが次々に出てきて面白い!それらを織り交ぜながら、内容についても様々な視点で順調に感想を書いていたのだが・・・。授業終了後、いざ絵本をかばんに片付けようとした瞬間に「あれ?この絵おかしい。グローブをはめていない」とコメント。主人公ではない選手の絵だったのだが・・・。「きっと試合が終わって外したんじゃない?」と言うと「いや、審判がこの場所にいて、ユニフォームを着てるからまだ試合中のはず。なのにどこにもグローブが描かれていない、おかしい」と指摘するT君。おおっ、さすが野球少年!と思いきや、さすがに「絵がおかしいです、間違っています」とは感想文には書けないので「良く気付いたね~。さ、お迎えの方がいらっしゃってるよ。」と適当にお茶を濁しつつ、ふと先に紹介した私可多咄を思い出した。話の内容によっては想像上の架空の状況を描くのは当然有りだが、彼が選んだ本は実話が元になった絵本。もう少しきちんと正確に描写してほしいなあと思うと同時に彼の洞察力には感心した出来事であった。
2017/07/01 02:05
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