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小さな国語塾のつぶやき

小僧の神様

志賀直哉の「小僧の神様」という短編がある。この小説は、仙吉という秤屋の丁稚をしている13,14歳の小僧と、Aという若き貴族院議員が主人公である。ある日仙吉は往復の電車賃をもってお使いへと出て、帰りの電車賃を浮かして歩いて帰ることでひとつはお寿司を食べられるかもしれないと思い、お寿司屋さんに入る。小僧は勇気を出して鮪の鮨に手をかけるが、それはひとつ六銭で小僧の四銭では足りなかった。一度つまんだ鮨を手放し、小僧は同じように勇気を出して店を飛び出していった。そこに居合わせた若き貴族院議員Aは後日に口実を作り、名前を隠して小僧さんにお寿司をごちそうする。が、自分のしたことは偽善なのでは?こんなことを気の小さな自分がしなきゃよかったと思うのだ。一方、小僧の方は悲しい時、苦しい時にはその客のことを思うようになり、いつかまた思わぬ恵みをもってあの客が現れるのではないか、と思うようになるというあらすじ。深読みをすれば?!Aの行為は上から目線で「対等ではない」といった倫理観にたどり着くだろう。が、個人的にはまだ13、4歳の小僧さんが未来への希望を持てるような素敵な行為だった、小僧さんが将来出世して番頭にでもなった時に、若くておなかをすかせながら頑張っている丁稚奉公の小僧さんたちに御馳走してあげてほしいと思うのだ。人間は大人になって経済的に余裕が出来て好きなものを好きなだけ食べるものよりも、意外と苦しかったころに仲間同士で食べたおにぎりやカップ麺のことをおいしかった思い出として感じるもの。昨日、近所で美味しいラーメンを食べながら、ふと「小僧の神様」を思い出した。幼い頃の思い出、特に辛かったことの思い出は将来、なつかしさを伴った素敵な思い出に変わりうる。ぜひGWは遊び、勉強、部活それぞれの思い出を作ってほしいと若い子たちに対して思う。

2017/05/04 01:16

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