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小さな国語塾のつぶやき

羊と鋼の森

2016年の本屋大賞に選ばれた「羊と鋼の森」(宮下奈都著)をようやく読むチャンスに恵まれて、あっという間に読み切った。宮下氏は夫の仕事の関係で北海道新得町トムラウシへ移住し1年間を過ごし、北海道の大自然を目の当たりにしたときに、以前から描きたいと思っていた調律師の物語が結びついたという。「音と自然、言葉には表せない美しさを言葉にする。どちらも私にとっては挑戦でもあった」と振り返るように、物語では音色が森の風景となって広がっていく。本当に文章を読んでいくうちに目の前に風景が、そして音やリズムが色を付けて踊っているような光景が脳裏に浮かんでくる。魅力的な文章、引き込まれる小説というのはこういうものだと実感させられる。正直言って「会話文が多く、一文が短い」という点においても「読みやすい」条件を満たしているのだが、いわゆる小中高生向けのライトノベルとの決定的な違いは「文章が洗練されている」ことだろう。芸術分野はもちろんあらゆる分野において「本物に触れる」ことの重要性が説かれるが、文章もしかり。ぜひ本物の「文章」に触れるチャンスにもなるおすすめの一冊。

2016/08/21 12:09

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